新しい春

 

八幡様の 参道は

そぞろ賑わう 晴衣装

去年は色々 ありました

ほつれもつれて またほつれ

あなたとわたし 占って

神籤をふたつ 買いました

 

境内のほとり 忍ばせて

そっと開いた おみくじは

恋愛 あきらめなさいと・・・

恋愛 この人より他はなし

新しい春に 願かけて

神籤をふたつ 結びます

 

 

誰も彼もが 幸福を 微笑顔で 

待ちわびる あなたが幸せで 

いてくれたら それでいい 

それだけでいい すこし冷たい 

春風が 御籤の枝を 揺らします

 

 

 

歌 旅                      

 

夢を片手に 歌人ひとり

今日もわたしは 歌います

春の信濃路 薄紅(うすべに)は

頬染め香(かぐわ)し 乙女達の

純情(うぶ)な恋心(こころ)を 風にのせ

 

夢を片手に 袂(たもと)揺らして

皆に届ける 恋の歌

初夏の渡良瀬 七夕は

ソーダの泡の様(よ)に 

消えてった 蒼い初恋 思い出す

 

夢詰めこんだ トランクひとつ

今日も何処かで 歌います

秋は吉野路 赤蜻蛉(あかとんぼ)

東へ西へ 故郷(ふるさと)の

遠く呼ぶ声 聞こえます

 

 

夢を片手に 歌人ひとり

心をこめて 歌います

雪の嵯峨野路 嵐山

つよく生きると 雪化粧

春はそこまで 来ています

 

 

 

横浜恋路                

 

馬車道は 雨の石畳

街のネオンを 滲ませる

ちょっと場末の この店に

そっと忘れて 帰りたい

行方も知らぬ この恋を

 

幸も不幸も 恋の路

ためらいもなく この身に落ちる

大桟橋の 外国船は

そっと乗せたい デッキの上に

行方も知らぬ この恋を

 

浜風に揺れる 花の路

午後の港の 風景は

遥かに響く 汽笛のなかに

そっと胸に しまいましょう

運命と知った この恋を

 

 

 

隅田の恋唄                

 

隅田の花火は 恋の花

パッと咲いたら パッと散る

一夜かぎりの 逢瀬なら

月も柳の 影となる

 

隅田の花火は 恋の花

綺麗に咲いたら 悔いはなし

兄さん姉さん 許して下さい

法度も忍ぶ ふたりです

一年一度の 夏の日は

隅田の川に 花が咲く

 

 

 本所 駒形 吾妻橋 

 恋しくて 淋しくて

 両国 蔵前 厩橋

 恋しくて 会いたくて

 

隅田の花火は 恋の花

パッと咲いたら パッと散る

一年一度の 夏の日は

隅田の川に 花が咲く

 

 

 

駿河の旅人                

 

駿河に浮かぶ 富士の山

東へいそぐは 若者ひとり

興津 吉原 箱根を越えて

一旗あげるは 花の都

ここは東海道 駿河の国は

夢もはぐくむ 宿場町

 

駿河に浮かぶ 富士の山

西へむかうは 老夫(おいぼれ)ひとり

島田 掛川 大井を渡し

錦は都へ おきざりに

ここは東海道 駿河の国は

心も癒す 宿場町

 

駿河に浮かぶ 富士の山

東へ西へ 旅する人よ

沼津 蒲原 由井に原宿

江尻に鞠子 府中藤枝

ここは東海道 駿河の国は

人生行き交う 宿場町

 

 

 

南太平洋                

 

プロペラは 夏草靡き空見上ぐ

言葉にならない言葉が 風を切る

父よ母よ どうぞ御幸せに

どうぞ我儘を お許しください

 

遥か 南の大洋に

命の花 一輪

ああ 知覧の丘に 夏が来る

ああ 知覧の丘に 夏が来る

 

御心は 涙隠して空見上ぐ

言葉にならない言葉が 風を舞う

妻よ 子らよ 命を大切に

未来をしっかりと 生きてください

 

遥か 南の大洋に

命の花 一輪

ああ 知覧の丘に 夏が来る

ああ 知覧の丘に 夏が来る

 

 

 

北国育ち                

 

郵便受に 積もった雪を

そっと押しやり 覗き見る

途絶えて久しい 便りにも

思い巡らす 毎日です

わたしは 北国育ち

辛抱なら 慣れています

 

商売上手な 詐欺師や

化粧の上手い 女たち

あなたが信じた 夢を

見失わぬよう 祈っています

わたしは 北国育ち

ななつ星 見上げながら

 

季節を知る 鳥たちは

翼広げる 北の大地へ 

あなたもきっと 夢かなえ

舞い降りる 日がくると

わたしたち 北国育ち

故郷を 忘れはしない

 

 

 

六月灯の頃                

 

ふるさと離れた あなたのことを

今でもこうして 思っています

泣き虫だけど 優しかった

幼なじみの あなたのことを

ひとり歩く 境内は

祭囃子も すこし寂しくて

六月灯の頃 雨上がりの空は

きれいな 青色をしています

 

忙(せわ)しい都会の 暮らしぶり

心なしか 気にしています

お人好しで 優しすぎ

譲ってばかりでは いけませんよ

ふたり灯(とも)した 線香の

花火の音が とおくはじけて

六月灯の頃 故郷の空は

きれいな 青色をしています

 

小さな町に 時折届く

風の便りを 聞いています

いい人みつけて 一緒になって

幸せに 暮らしていると

別々に歩く 人生を

ほんの一瞬 巻き戻してみたくて

六月灯の頃 思い出の空は

きれいな 青色をしています

六月灯の頃 雨上がりの空は

きれいな 青色をしています